SpaceXのIPOはいつ?史上最大級IPO
イーロン・マスク氏率いるSpaceXが、史上最大級のIPOに向けて動き出しました。上場時期は早ければ6月12日と報じられており、想定時価総額は約1.75兆ドル規模。SECに提出されたS-1資料からは、同社の独特な事業構造が見えてきます。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)ポイント
SpaceXは「SPCX」のティッカーでNasdaq上場を目指す。上場は早ければ6月12日、想定時価総額は約1.75兆ドル
SpaceXはStarlinkの収益をStarshipやAIといった将来事業へ投じる構造
期待は大きい一方で、AI事業の赤字、Starshipの不確実性、マスク氏に集中する議決権など、投資家が注意すべきリスクもある
目次
SpaceXってどんな会社?
IPOの規模とスケジュール
Starlinkで稼ぎ、StarshipとAIで使う
関連銘柄はどう見る?
まとめ
イーロン・マスク氏のSpaceXが、ついに上場へ動き出しました。SpaceXは2026年5月20日、米SEC(証券取引委員会)へS-1登録届出書を提出。Class A株をNasdaqとNasdaq Texasに「SPCX」のティッカーで上場する方針を明らかにしました(*1)。
ロイターによれば、想定時価総額は約1.75兆ドル、調達額は約750億ドル、早ければ6月12日に上場とされています(*2)。実現すれば、歴史上最大級のIPOになりそうです。
SpaceXってどんな会社?
SpaceXといえば、宇宙事業を行っている企業というイメージがあると思います。先週SEC(証券取引委員会)に提出されたS-1登録届出書から、SpaceXの事業内容を確認してみましょう。
SECに提出されたSpaceXの資料より
1つ目は、ロケット打ち上げと宇宙輸送です。再使用型ロケット「Falcon 9」と有人宇宙船「Crew Dragon」が中核で、NASAの宇宙飛行士を国際宇宙ステーションまで運ぶ役割も担っています。民間企業が国の有人ミッションを支えること自体、SpaceXの信頼性を示す実績といえます。
2つ目がStarlinkです。低軌道に多数の小型衛星を展開し、家庭、船舶、航空機、企業向けにネットを提供しています。加入者はすでに1,000万人を超え、もはやSpaceXの稼ぎ頭です。自社ロケットで衛星を打ち上げ、自社サービスとして通信を売る。この垂直統合こそがSpaceXの強みと言えます。日本でもKDDI、ソフトバンク、ドコモがStarlinkを活用した衛星通信サービスを展開しています。
3つ目が、次世代の超大型ロケット「Starship」です。完全再使用型を目指し、月・火星への大量輸送や、将来的な宇宙インフラ構想の中核になる存在です。ただし、現在は飛行試験中で、商業的な成功はまだ未確定。期待は大きい一方で、開発費もリスクも大きい領域です。
AIにより図解作成
そして、今SpaceXが上場に動く背景には、Starlinkと再使用ロケットで収益の土台が見え始めた一方、StarshipやAIへの投資負担が急拡大していることがあります。ロイターは、同社の将来計画がStarshipによる打ち上げコスト低下や、宇宙空間でのAIデータセンターといった未確立の市場に大きく依存していると報じています。つまり今回のIPOは、Starlinkで稼げるようになった今、次の大型投資を公開市場で支えるための上場と見られます。
IPOの規模とスケジュール
報道によれば、SpaceXは約750億ドルを調達し、約1.75兆ドルの評価を目指すとされています。6月4日にロードショー、6月11日に価格決定、早ければ6月12日に上場というスケジュールも報じられています(*2)。
ただし、これは報道ベースの見通しであり、最終条件は市場環境によって変わる可能性があります。 気になるのは、市場がこの規模を受け止められるのかという点です。評価額が高くなれば、上場後に求められる成長のハードルも上がります。公開価格が強気すぎれば、上場直後の値動きが重くなる可能性もあります。なお、S-1のTAM(会社が理論上狙える市場規模)には過大との指摘もあります(*3)。
もう1つ重要なのが議決権構造です。報道では、マスク氏は上場後も85.1%の議決権を保持する見通しです(*4)。良く言えば、短期株主に振り回されず長期プロジェクトを進めやすい。悪く言えば、外部株主の発言力はかなり限定されます。SpaceX株を買うことは、かなりの部分でマスク氏のビジョンに乗ることでもあります。
Starlinkで稼ぎ、StarshipとAIで使う
S-1資料によると、2025年の連結売上は約187億ドル。そのうちStarlink中心のConnectivity部門が売上114億ドル、営業利益44億ドルを稼ぎ出しました(*5)。 営業利益率はおよそ4割で、通信事業としてはかなり高い水準です。宇宙関連企業には、夢は大きくても売上が小さい会社も多いですが、SpaceXにはすでに収益源があります。
一方で、SpaceXは利益をそのまま積み上げる会社ではありません。2026年1〜3月期は全体売上46.9億ドルに対し、営業損失は19.4億ドル。特にxAIは売上8.18億ドルに対し、営業損失24.7億ドルと報じられています(*6)。
要するに、Starlinkで稼いだキャッシュを、StarshipとAIへ大量投下している構図です。好意的に見れば、通信事業のキャッシュで未来事業を育てる理想形。辛口に見れば、高収益の通信会社に巨額赤字のAIラボと開発途上のロケット事業がぶら下がっているとも読めます。
投資家が見るべきなのは、赤字そのものよりも、その赤字が将来の競争優位につながるかでしょう。Starshipが打ち上げコストを下げ、AI投資が新たな収益源になるなら、高い評価も正当化されるかもしれません。しかし成果が遅れれば、Starlinkの利益を食い続ける重荷として見られる可能性もあります。
関連銘柄はどう見る?
SpaceXが上場すれば、SPCXだけでなく宇宙関連銘柄やETFにも注目が集まりやすくなります。Rocket Lab(RKLB)は宇宙輸送インフラ、AST SpaceMobile(ASTS)やPlanet Labs(PL)は地球観測の文脈で見られやすい銘柄です。
20日のSpaceXの上場のニュースが出てから、宇宙関連銘柄の株価は上昇していいます。 ただし、「SpaceXがすごいから宇宙関連株は全部買い」という単純な話ではありません。SpaceXの強さは、ロケット、衛星、通信サービスを1社でつなぐ垂直統合にあります。
関連銘柄の多くは、その一部を担う企業です。IPO前後にテーマ買いで上がる可能性はありますが、上場後に資金がSPCXへ集中し、周辺銘柄が売られる展開もあり得るかもしれません。
まとめ
SpaceXは、Starlinkという「稼ぐための堅実な事業」と、Starship・AIという「大きな未来に賭ける事業」を同時に抱える銘柄といえます。これまで数々の事業を成功させてきたイーロンマスク率いるSpaceXで、夢のような事業も、「彼ならやってくれるのでは」という期待感が強く織り込まれるのではないでしょうか。SpaceXやSECの続報に注目が集まります。
参考文献
(*1)SEC, “Form S-1, Space Exploration Technologies Corp.” https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026036936/spaceexplorationtechnologi.htm
(*2)Reuters, “SpaceX accelerates IPO timeline, targets June 11 pricing on Nasdaq” https://www.reuters.com/world/spacex-accelerates-ipo-timeline-targets-june-11-pricing-nasdaq-2026-05-15/
(*3)Axios, “Musk’s SpaceX IPO total addressable market math” https://www.axios.com/2026/05/24/musk-spacex-ipo-tam
(*4)Reuters, “SpaceX IPO filing lays bare losses and Musk control as it stakes future on AI” https://www.reuters.com/legal/transactional/bound-mars-elon-musks-spacex-unveils-filing-blockbuster-ipo-2026-05-20/
(*5)Fortune, “Blast off: SpaceX finally files IPO prospectus, reveals revenue is up—but losses are too” https://fortune.com/2026/05/20/spacex-finally-files-ipo-prospectus-reveals-revenue-is-up-but-losses-are-too/
(*6)Morningstar, “‘Financials look reckless’: Lifting the xAI hood in the SpaceX IPO” https://www.morningstar.com/stocks/financials-look-reckless-lifting-xais-hood-spacex-ipo
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