記事のポイント
S&P500は年初来10.73%高。一方、構成銘柄の約6割は過去最高値から20%以上下落
7〜9月期の指数上昇はMicrosoft、NVIDIA、Apple、Metaの4社が主導
10月末はAlphabet、Amazon、Intelに決算後の売り。焦点はAI投資の成果へ
(本記事は公開情報に基づく分析および筆者の見解であり、正確性や完全性を保証するものではありません。特定銘柄の売買を推奨するものでもなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。)
📅 今週の注目決算
今週はAppleやAMDなど、大手テック企業の決算が続きます。AI関連事業の成長に加え、今後の業績見通しにも注目です。
11/3(火)朝|Apple(AAPL)
新型iPhoneの販売動向や中国市場の売上、AI機能が今後の成長につながるかに注目。11/3(火)朝|Palantir(PLTR)
政府・企業向けAIプラットフォームの需要拡大が、売上と利益にどこまで反映されるかが焦点。11/4(水)朝|AMD(AMD)
AI半導体とデータセンター事業の成長に注目。NVIDIAを追うAI向けGPUの販売動向がポイント。11/6(金)夜|Moderna(MRNA)
ワクチン売上と赤字縮小の進展に加え、がん治療薬など新薬開発の進捗に注目。
※ 発表日時は変更される場合があります。
指数は年初来プラスなのに、約6割の銘柄が高値から20%安
S&P500は10月6日に過去最高値を記録しました。10月30日の終値は7,580.07ポイント。直近では下落しましたが、年初来ではなお10.73%上昇しています(※1)。米国株全体が好調に見える数字です。
一方、英国の投資会社AJ Bellは10月21日、Dow Jones Market Dataの集計を引用し、S&P500構成銘柄のおよそ60%が過去最高値から20%以上下落していると報じました(※2)。
この下落率は、各社がそれぞれ付けた過去最高値を基準としています。高値を付けた時期は企業によって違いますが、以前の株価水準を回復できていない企業が多いことは確かです。では、なぜ指数全体は上がっているのでしょうか。
上昇をつくったのは、わずか4社の大型株
S&P500は約500社を対象にする指数ですが、各社を同じ比率で計算しているわけではありません。時価総額の大きい企業ほど、指数を動かす力が強くなります。9月30日時点では、上位10銘柄だけで指数全体の39.1%を占めていました(※1)。
その影響は7〜9月期の成績にはっきり表れています。調査会社Diffusion Capitalの試算では、Microsoft、NVIDIA、Apple、Metaの4社が指数を4.1ポイント押し上げました。ほかの構成銘柄の寄与は合計でマイナス2.0ポイント。差し引きで指数の配当込みリターンはプラス2.1%でした(※3)。
4社だけで指数全体の上昇をつくり、残りの銘柄は合計で足を引っ張っていたことになります。多くの企業の株価が低迷していても、巨大企業が好調ならS&P500は上がる。指数と個別株の成績が食い違う理由はここにあります。
ほかの企業には、金利と原油高が重荷に
大型テック株に買いが集まる一方、ほかの企業には厳しい環境が続いています。その背景の一つが金利の高止まりです。金利が高いと借り入れによる資金調達に費用がかかり、不動産や設備投資の負担が大きい企業ほど利益が圧迫されやすくなります(※3)。
原油高も企業間の差を広げます。IMFの統計では、ブレント原油の月間平均価格は6月の84.49ドルから9月には102.02ドルに上昇しました(※4)。輸送費や仕入れ費用を販売価格に転嫁しにくい企業にとっては、利益を減らす要因となります。
こうしたコスト負担のある企業と、AI関連の成長期待を集める企業との間で、株価の差が広がってきました。ところが10月末には、そのAI関連企業に対しても投資家の評価が厳しくなりました。
こうして7〜9月期のS&P500を支えていた大型テック株ですが、10月末の決算を境に流れが変わり始めました。Alphabetは10月29日に12.6%下落し、翌30日にはAmazonやIntelも売られました。同日にはNVIDIAやAMDにも売りが広がっています。
これまで指数を押し上げてきたテクノロジー株が、今度は指数の下落要因になり始めたのです。背景には、巨額のAI投資がいつ利益や現金収支の改善につながるのか、という投資家の疑問があります。
GOOG・AMZN・INTCの決算ショック AI投資の成果が問われ始めた
10月28〜29日に発表された決算を受け、Google親会社のAlphabet株は29日に12.6%下落。30日にはAmazon株が1.4%安、Intel株は28.6%安となりました(※5)。売られた理由には違いがありますが、共通しているのは、AI関連の投資や今後の収益に対する市場の警戒です。
Alphabet(GOOG/GOOGL)では、AI設備投資が膨らみ、7〜9月期は事業から得た現金を設備投資が上回りました。投資家は、AI事業が成長する一方で、その投資がいつ現金として戻ってくるのかを気にしています(※5)。
Amazon(AMZN)は、クラウド事業のAWSが前年同期比39%増と好調でした。それでも直近12か月のフリーキャッシュフローは424億ドルの赤字に転じています。AI向けデータセンターへの投資額が急増しているためです(※6)。成長の勢いだけでなく、投資に使った資金を回収できるかが焦点となりました。
Intel(INTC)は、PC市場の弱さと先行きの厳しい見通しが嫌気されました。データセンターへの投資が活発でも、PC向け事業まで同じように伸びるわけではありません。AI投資の拡大が、テクノロジー業界のすべての企業を支えているわけではないことが表れています(※5)。
AlphabetとAmazonは、S&P500の上位10銘柄に入る企業です(※1)。指数を支える大型株まで売られると、少数銘柄への依存が強い市場は影響を受けやすくなります。Intelの急落は、AI関連の設備投資が盛んであっても、PC向けなどそれ以外の事業の業績は別に判断される局面が来ていることを示しました。AI投資の波が業界全体を等しく押し上げるわけではないことが、今回の決算で改めて浮かび上がりました。
今後の焦点は二つです。
まず、AI関連の巨額投資が利益と現金収支の改善につながるか。
次に、値上がりする銘柄の数が増えるかです。均等ウェイト指数は10月の1か月で約+5.0%と、通常のS&P500(約−0.9%)を大きく上回りました。年初来でも均等ウェイト指数が約+14%と、通常のS&P500(+10.73%)を上回っています。
米国株全体の強さを判断するには、指数の数字だけでなく、その内側にある企業の業績を確認することが欠かせません。
参考文献
(※1)S&P Dow Jones Indices「S&P 500」2026年10月30日の指数騰落率、9月30日の構成比率
https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/
(※2)AJ Bell「Is US market strength a mirage?」2026年10月21日(Dow Jones Market Dataによる構成銘柄の下落率など)
https://www.ajbell.co.uk/news/us-market-strength-mirage
(※3)Diffusion Capital「What will move markets in Q4 2026」2026年10月9日(7〜9月期のリターン寄与と金利環境)
https://www.diffusion-capital.com/en/insights/q4-outlook-2026
(※4)IMF「Primary Commodity Prices」/FRED「Global price of Brent Crude」2026年6〜9月
https://fred.stlouisfed.org/series/POILBREUSDM
(※5)Reuters「Stocks fall on AI cash burn worries while bonds rally with oil」2026年10月30日(3社の株価反応、AI投資への懸念)
https://www.investing.com/news/economy-news/stocks-slump-bonds-leap-as-ai-giants-spending-spooks-investors-4985741
(※6)Amazon「Amazon.com Announces Third Quarter Results」2026年10月29日(AWSと現金収支)
https://ir.aboutamazon.com/news-release/news-release-details/2026/Amazon-com-Announces-Third-Quarter-Results/
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