Palantir AIで高成長と高収益を両立 四半期利益 1年前の売上超え
Palantirの4-6月期は売上高93%増、GAAP純利益10.6億ドルと高成長・高収益を両立しました。基盤モデル競争を主戦場にせず、オントロジーで企業の業務をAIにつなぐ。その独自の強みが、米国コマーシャルの149%増や高い利益率をどう生んでいるのか、背景も含め読み解きます。
(本記事は公開情報に基づく分析および筆者の見解であり、正確性や完全性を保証するものではありません。特定銘柄の売買を助言・推奨するものでもなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。)Palantirの4-6月期は、売上高が93%増、GAAPベースの純利益が10.6億ドルでした。前年同期の売上高10.0億ドルを、利益だけで上回った計算です。強さの正体は、会社の業務をAIで動かせる形にする「オントロジー」と、AIを実際の業務につなぐ売り方にありました。
記事のポイント
4-6月期のGAAPベースの純利益は10.62億ドル。前年同期の売上高10.04億ドルを超えた
売上高成長率と調整後営業利益率を足したRule of 40は155%。会社資料の比較では、世界の時価総額上位100社でも上位グループに入る
強みは会社の業務をAIで動かせる形にする「オントロジー」

基盤モデルを主戦場にしない会社が、AIで高収益を上げている
AIで最も利益を取りやすいのは、強い基盤モデルを作る側。そんなイメージがあるかもしれません。ところが、Palantirはその競争を主戦場にしていません。それでも8月3日の決算を受けて、株価は翌日に約30%上昇しました(※2)。
では、基盤モデルの開発競争を主戦場にせずに、なぜここまで利益が出るのでしょうか。
一四半期の利益が、一年前の売上を超えた
今期の売上高は19.35億ドルで93%増、GAAPベースの純利益は10.62億ドルでした。
前年同期の売上高は10.04億ドルなので、一四半期の利益だけで1年前の売上を超えた計算です。もちろん、この数字をそのまま本業の稼ぐ力と見ることはできません。
純利益には、利息収入7,751万ドルやその他収益9,184万ドルも含まれています。それでもGAAP営業利益は9.12億ドル、営業利益率は47%に達しました(※3)。
もう一つ大きいのが、設備投資の軽さです。
営業キャッシュフロー12.16億ドルに対して、設備投資はわずか1,455万ドル(※4)。一方、インフラでは第三者クラウドを大きく活用しています。完全に身軽というわけでもなく、10年で最低56億ドルのクラウド支出契約も開示されています(※3)。
つまり、大規模な設備投資を自社で抱える代わりに、第三者クラウドへの支払いという形でインフラを利用しています。
伸びているのは米国の民間企業
Palantirには、政府案件に強い会社という印象が長くありました。
しかし今回、成長率で目立ったのは民間です。 米国コマーシャル売上は7.64億ドルで前年同期比149%増。一方、米国政府は8.09億ドルで90%増でした(※4)。
しかも、1-3月期の米国コマーシャルは133%増でした。事業規模が大きくなっているにもかかわらず、成長率はさらに加速しています(※5)。
米国コマーシャルの顧客数も653社と、前年同期比35%増。既存顧客からの売上がどれだけ維持・拡大したかを示すNDRも157%に達しました(※6)。 新しい顧客が増えているだけでなく、すでに使っている企業からの売上も大きく伸びていることが分かります。
強さの正体は「オントロジー」
では、その民間企業は何にお金を払っているのでしょうか。
どうやらただAIが賢いというわけではないようです。
会社の業務をそのままデータから動かせるように
Palantirでは、「オントロジー」と呼ばれる仕組みを使っています。
オントロジーとは、ITやAIの世界では一般的に、「何が存在していて、それぞれがどう関係しているのか」を整理した知識の地図や設計図のようなものです。
Palantirではこれを会社の業務に当てはめます。
たとえば「この工場」「この部品」「この注文」「この顧客」といった情報を、バラバラのデータとして持つのではなく、現実の仕事と同じ関係のままつなげていきます。
つまり、会社の中で「何があり、何と何がつながり、誰が何をしているのか」を、ソフトウェアの中に再現するわけです。
これが、Palantirのいうオントロジーです(※3)。会社の見取り図を、そのままデジタル上に作るイメージです。
この土台があると、AIの使い方も変わります。
AIが文章を返すだけではなく、データや判断のロジック、実際のアクションをつなぎ、業務ワークフローを動かすことにつなげられます(※3)。決算説明会でPalantir側は、法律事務所Kirkland & Ellisで数日かかっていた分析や起案が、数分で終わるようになったと説明しています(※7)。
AIPは「AIモデルを業務につなぐ場所」
そのオントロジーの上でAIを動かすのが、AIPと呼ばれるものです。AIPは、外部の大規模言語モデルを企業のデータや業務につなぎ、AIエージェントを作ったり、本番環境でAIの性能を評価したりするための仕組みです(※3)。
ポイントは、特定のAIモデルだけに依存しないことです。
用途に応じて複数のモデルを選び、より適したモデルが出てくれば切り替えることができます。同社によると、NVIDIAと組んで取り込んだNemotron Ultraでは、導入から24時間で、従来のフロンティアモデルを上回る本番タスクが5つ見つかったといいます(※7)。
つまり、Palantirは、「どのAIモデルが最強か」を当てにいくのではなく、使えるモデルをその都度選び、企業の実際の仕事につなげる立場を取っています。
トークン消費ではなく、価値創出に合わせる
仕組みが良ければ売れる、というほど企業向けソフトは甘くありません。
この会社が技術と同じくらい話すのは、売り方のほうです。
「クリックやトークンやチャットでは課金しない」
株主向け書簡には、「我々はクリックやトークンやチャットには課金しない」とあります(※8)。
考え方はシンプルです。 AIを何回使ったかではなく、AIによって顧客の仕事にどれだけ価値が生まれたかに、Palantir側の報酬も近づけるという発想です。
ただし、実際の契約がすべて成果報酬というわけではありません。10-Qには、サブスクリプション型や従量型の価格体系への言及もあります(※3)。価値に応じて報酬を得るという思想は強い一方で、実際の契約形態はもう少し幅があります。
実装まで踏み込む売り方
そして、顧客に価値を出してもらうにはソフトを渡すだけでも足りません。
Palantirでは、FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)と呼ばれる自社のエンジニアが顧客と直接協働し、実際に使えるところまで一緒に作り込みます(※9)。
Palantir側の説明では、5月のAgent Campに参加したソフトウェア企業が、その後5か月・1,500万ドルの初回契約を結びました。別のシリコンバレーの大手テック企業では、フロンティアラボの導入チームが成果を出せなかった案件で、ACV(年間契約価値)1,000万ドルの契約につながったといいます(※7)。
つまりPalantirは、AIを単に売るだけではなく、「実際の仕事で成果が出るところまで入り込む」売り方をしているわけです。
「AIモデル開発企業の言いなりにはならない」
この売り方の背景には、PalantirがAI市場でどの立場を取るかという考え方もあります。
同じ株主向け書簡には、「我々の顧客は、言語ラボの属国になることを拒んだ」という一文があります(※8)。ここでいう「言語ラボ」とは、大規模言語モデルを開発するAI研究所・企業を指します。
カープCEOが警戒しているのは、AIモデルを作る企業に、顧客企業のデータや業務知識まで握られてしまう構図です。
Palantirはこれを「AIソブリンティ」という考え方で捉え、企業が自社のデータや業務ロジック、意思決定の主導権を持ち続けることを重視しています。
ただし、企業データが実際にモデル学習へ使われるかどうかは、AI事業者や契約条件によって異なります。ここは客観的な一般論というより、Palantir側が打ち出している問題意識として見るのが適切です。
これから見ておきたいこと
ここまで数字は強く、Palantirの考え方もはっきりしています。
ただ、この成長が続くかは別の問題です。
米国コマーシャルの成長は続くか:売上高は前年同期比149%増まで加速。規模が大きくなった後も、この伸びをどこまで維持できるか(※4、※5)
実装モデルをどこまで広げられるか:PalantirはFDEが顧客と直接協働し、実際の業務への導入まで深く関わる。このやり方を顧客数の増加に合わせて拡大できるか(※3、※9)
オントロジーの優位性は続くか:Palantirの強みはAIモデルそのものではなく、企業のデータや業務をつなぐオントロジーにある。この強みを今後も競争優位として維持できるか
Palantirの強みは、AIブームの中でも、モデルそのものとは別の場所で勝負している点と言えます。 基盤モデルの開発競争や大規模データセンターへの自前投資を主戦場にせず、会社のデータや仕事の流れを整理し、AIを実際の業務で使える形にすることに注力しています。
Palantirが賭けているのは、どのAIモデルが勝つかではなく、どのモデルが勝っても、企業がAIを実際の仕事で使うための土台は必要になるということです。
その土台を他社がどこまで代替できるのか。オントロジーと実装力が、このまま競争優位であり続けるのか。モデルの勝者が変わっても、Palantirの立ち位置は変わらないのか。そこが次の焦点と言えるでしょう。
参考文献
(※1)Woodstock 米国株投資アプリ「Palantir(PLTR)」(株価および業績推移の画面)2026年8月
(※2)Yahoo Finance ヒストリカル株価データ「Palantir Technologies Inc.(PLTR)」(2026年8月3日終値125.65ドル、8月4日終値162.66ドル、8月7日終値172.01ドル)
https://finance.yahoo.com/quote/PLTR/history/
(※3)Palantir Technologies Inc. Form 10-Q(2026年第2四半期)(利息収入、その他収益、クラウド支出契約、価格体系、製品・事業説明など)2026年8月4日
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1321655/000132165526000041/pltr-20260630.htm
(※4)Palantir Technologies Inc. 2026年第2四半期決算プレスリリース(売上高、利益、米国コマーシャル・政府売上、キャッシュフロー、設備投資、通期ガイダンスなど)2026年8月3日
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1321655/000132165526000039/a2026q2ex991pressrelease.htm
(※5)Palantir Technologies Inc. 2026年第1四半期決算プレスリリース(Q1の米国コマーシャル売上の前年同期比133%増など)2026年5月4日
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1321655/000132165526000026/a2026q1ex991pressrelease.htm
(※6)Palantir Technologies “Q2 2026 Business Update”(Rule of 40の他社比較、米国コマーシャル顧客数653社、NDR 157%など)2026年8月3日
https://investors.palantir.com/files/Palantir%20-%20Q2%202026%20Business%20Update.pdf
(※7)Investing.com “Earnings call transcript: Palantir tops Q2 2026 forecasts, shares jump after hours”(Kirkland & Ellis、Nemotron Ultra、Agent Camp、ACV 1,000万ドルなど)2026年8月3日
https://www.investing.com/news/transcripts/earnings-call-transcript-palantir-tops-q2-2026-forecasts-shares-jump-after-hours-93CH-4832452
(※8)Palantir Technologies “Q2 2026 Letter”(価格設計の思想、「言語ラボの属国」発言、AIソブリンティに関する主張など)2026年8月3日
https://www.palantir.com/q2-2026-letter/en/
(※9)Futurum Group “Palantir Q2 FY 2026 Earnings Surge on US Commercial AI Demand”(Forward Deployed Engineerを含む顧客実装方式の分析)2026年8月5日
https://futurumgroup.com/insights/palantir-q2-fy-2026-earnings-surge-on-us-commercial-ai-demand/
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