新ステーブルコインOpen USD(OUSD)発表 Circle、Coinbase下落
VisaやGoogle、PayPayらが参加する新ステーブルコイン「Open USD」が発表されました。発表後にCircleなどの関連株価が下落。複数企業で支える共通インフラとしての仕組みや、先行するUSDTらの牙城を崩せるかといった今後の注目ポイントを解説します。
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)VisaやGoogle、PayPayなど140社超が参加する新ステーブルコイン「Open USD」が発表された。
手数料無料や準備資産の収益還元を掲げ、特定の1社に左右されない決済の「共通インフラ」を目指す。
発表後に競合Circleの株価が下落するなど市場が動いた一方、既存の巨大プレイヤーの牙城を崩せるかが焦点。
2026年6月30日、Open Standardが新しいドル連動型ステーブルコイン「Open USD(OUSD)」を発表しました(*1)。参加企業にはVisa、Mastercard、Stripe、Coinbase、BlackRock、Google、Shopifyなどが並び、日本からもPayPay、みずほFG、三井住友FG、楽天グループなどが名を連ねています(*2、*3)。
Open USDのポイントとなるのは、単なる新コインではない点です。Open StandardはOpen USDが決済会社・銀行・テック企業・暗号資産企業が共通で使えるお金のインフラとなることを目指しています。
Open Standardとは、Open USDを運営する独立会社です。参加企業で構成される取締役会を通じて意思決定する設計で、特定の1社ではなく複数企業で支えるステーブルコインを目指しています(*1)。
本記事では、仕組みと期待、Open USDの見るべきポイントを整理します。
Open USD(OUSD)への反応―CircleとCoinbaseは下落
今回のOpen USD(OUSD)の発表後の取引で、USDCを展開するCircle株($CRCL)が約14%下落して65.39ドル、Coinbase株($COIN)も約6%下落して142.37ドルになったと報じられています(*6)。
背景には、Open USDがUSDCの競争相手になり得ることに加え、USDCの発行体であるCircleがOpen USDの参加企業リストに見当たらない点も意識された可能性があります。
一方Coinbaseは、Open USDの参加企業に含まれるものの、USDCにも深く関係するため、USDCへの競争圧力を嫌気して売られたと見られます。
新コイン Open USD(OUSD)とは?
「1ドル=1コイン」を目指すデジタル資産 ステーブルコイン
ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨と価値が連動するデジタル資産です。裏側では米国債や現金性資産などの準備資産で支えるのが一般的で、ブロックチェーン上で動くため、国境をまたぐ送金や24時間365日の決済に使いやすい、と期待されています。
Open USDが変えようとしていること
Open Standardは、既存のステーブルコインについて、企業が大規模に使うには「大口の発行・償還手数料」「準備資産の収益が利用企業に還元されにくい」「発行体の方針に左右されやすい」といった課題があると指摘しています(*1)。
そこで新しく発行されるOpen USDでは、企業は手数料なし、人工的な発行・償還量の上限なしで利用でき、準備資産の収益も管理手数料を除いてパートナー企業に還元されます。
運営は独立会社Open Standardが担い、パートナー各社で構成される取締役会が意思決定します。稼働は2026年後半の予定で、Solana、Stellar、Base、Polygonなど複数のブロックチェーンでの展開が報じられています(*3)。
なぜ大企業が集まっている?
Open USDが注目される理由は、企業の資金移動を効率化する仕組みとして設計されている点にあります。
EC企業なら出店者への支払いを速く、送金会社なら国境をまたぐ資金移動を安く行える可能性があります。決済会社や銀行にとっても、ステーブルコインを既存の金融システムにどう組み込むかは大きなテーマです。Reutersも、Open USDは企業が大規模利用する際の障害を取り除くことを狙っていると報じています(*2)。
Forbes JAPANによれば支援企業は149社にのぼり、決済・フィンテック、銀行、テックプラットフォーム、暗号資産インフラに広がっています(*3)。ここで大事なのは企業数だけではありません。ステーブルコイン市場が「各社が別々にコインを作る世界」で続くのか、「共通標準に合意する世界」に進むのか―Open USDはその分岐点にある実験的な取り組みともいえそうです。
ただし、普及は簡単ではない
Libra/Diemという前例も
Open USDを過度に楽観視するのは禁物です。今回の発表は大きなニュースですが、まだ稼働前で、現時点は多くの企業が参加を表明した段階に近いです。
大企業が集まったデジタル通貨プロジェクトが必ず成功するわけでもありません。過去には、Meta主導のLibra/Diemというプロジェクトがありました。しかし、Diem Associationは最終的に資産をSilvergateへ売却し、プロジェクトは終了しました(*4)。
USDT・USDCという既存の巨大プレイヤー
既存プレイヤーの厚みも壁になります。Reuters Breakingviewsによれば、Tether(USDT)の流通額は約1,840億ドルです(*5)。またBarron’sは、USDCの流通額を約736億ドルと報じています(*6)。
この2つだけで既に2,500億ドル超の市場を押さえている計算です。使える取引所・ウォレット・決済先が多いほど便利になるステーブルコインの性質上、後発のOpen USDが事実上ゼロからこのネットワーク効果を崩すのは、決して容易ではないでしょう。
投資家が見るべきポイント
実利用量と準備資産の透明性
まず見たいのは、Open USDが実際に企業の資金移動に入り込めるかです。
Reutersは、ステーブルコインはまだ主に暗号資産取引に使われ、日常送金・支払いには広く普及していないと指摘しています(*2)。稼働後の発行額、対応チェーン、実装企業数が最初のチェックポイントです。加えて、裏付け資産の中身、監査・証明の頻度、各国の規制当局との関係が、中長期の信頼の土台になります。
Open USDは、準備資産の収益をパートナー企業に還元する設計です。
USDCの発行体Circleにとって、準備資産の利息収益は重要な収益源のひとつであり、市場はOpen USDが単なる競合コインではなく、ステーブルコイン発行体の収益モデルそのものに圧力をかける可能性を意識したと考えられます。
Open USDは、ステーブルコインが「1社の商品」から「複数企業で支える共通インフラ」へ進む可能性を示すニュースです。ただし成功のカギは、参加企業の名前ではなく実際の利用量。発行額、提携先での実装、既存USDT・USDCからのシェア移動を追いたいテーマと言えます。
参考文献
(*1)Open Standard “Introducing Open USD” 2026年6月30日 https://joinopenstandard.com/blog/introducing-open-usd
(*2)Reuters “Consortium including Visa, Mastercard jointly launch new global stablecoin” 2026年6月30日 https://www.reuters.com/business/consortium-including-visa-mastercard-jointly-launch-new-global-stablecoin-2026-06-30/
(*3)Forbes JAPAN「グーグル・PayPay・楽天など140社超が支持、共同統治型ステーブルコイン『Open USD』」2026年7月1日 https://forbesjapan.com/articles/detail/100092
(*4)Reuters “Facebook’s cryptocurrency venture to wind down after asset sale to Silvergate” 2022年2月1日 https://www.reuters.com/technology/facebooks-cryptocurrency-venture-wind-down-after-asset-sale-silvergate-2022-02-01/
(*5)Reuters Breakingviews “Stablecoin giant is crypto’s fragile foundation” 2026年2月20日 https://www.reuters.com/commentary/breakingviews/stablecoin-giant-is-cryptos-fragile-foundation-2026-02-20/
(*6)Barron’s “Circle Stock Sinks After Visa, Others Announce Rival Stablecoin Network” 2026年6月30日 https://www.barrons.com/articles/circle-stock-price-stablecoin-network-visa-d0be710d
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