Alphabet Q2決算 株価約4.7%下落 膨らむAI投資に警戒
7月22日、Alphabet(GOOG)の4-6月期決算が発表されました。売上高は前年同期比24%増、Google Cloudは82%増。売上高とクラウドの成長率だけを見れば、文句のつけようがない内容です。ところがその後の時間外取引では、一時4.7%安となりました。好決算がなぜ売られたのか。決算書からたどります
(本記事は、公開情報に基づく分析および筆者の見解を示したものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。株価や企業の将来を保証せず、また特定の政治的立場や政策を支持・推奨する意図も一切ありません。投資判断や経済的判断は、ご自身の責任で行ってください。)Google Cloudは82%増、検索・YouTube広告も二桁成長。本業の営業利益は30%増え、契約残高も5,140億ドルに拡大
1株利益は294%増の9.11ドル。ただし株式証券の利益が6.26ドル押し上げており、単純に除くと2.85ドル
AI向け設備投資がほぼ倍増し、FCFは約59億ドルの赤字に。通期計画の増額を警戒して株価は時間外で下落
クラウドが82%成長、本業は好調そのもの
まず、素直に評価できる部分から見ていきましょう。
今回の決算は、本業の稼ぐ力がしっかり伸びていることを示していました。
主役はGoogle Cloud
売上高は1,198億ドルで、前年同期から24%増えました(*5)。市場予想の1,169億ドルを上回る着地です(*6)。
けん引役はGoogle Cloudで、売上は248億ドルと前年から82%も伸び、営業利益は28億ドルから88億ドルへと3倍以上に膨らみ、利益率も約36%まで高まりました(*5)。
将来の売上につながる契約残高(未認識の契約収益)は5,140億ドルと、前年同期の約1,060億ドルから約4.8倍に拡大しており、需要の裏づけは厚いようです(*7)。
経営陣も、Fortune 100企業の約9割がGemini Enterpriseを使い始めたと説明しています(*5)。
広告も二桁で伸びている
屋台骨である広告事業も堅調でした。
Google検索の広告は17%増、YouTube広告は13%増と、いずれも二桁成長です。
会社全体の営業利益は408億ドルで30%増え、営業利益率は32%から34%へと2ポイント改善しました。
利用者の裾野も広く、Gemini Appは月間9.5億人が使い、FIFAワールドカップ2026関連の動画はYouTubeで17億人を超えるユニーク視聴者に届いたといいます(*5)。
売上と営業利益を見る限り、本業の成長はむしろ加速しています。
1株利益「294%増」のからくり
ここで、見出しになりやすい数字に一つ注意が必要です。
1株利益が前年の4倍近くに跳ねているのですが、その大半は本業とは別のところから来ています。
利益を押し上げた株式証券の利益
普通株主帰属純利益は1,121億ドル、1株利益は9.11ドルと、前年からそれぞれ298%、294%増えました。一見すると爆発的な増益のように見えます。
ただ、この四半期には営業外の「その他の収益(費用)、純額」が約980億ドルの利益として計上されています。
中心となったのは保有する株式証券の利益で、会社によれば主として未実現の評価益、いわゆる含み益です。
Alphabetは、この株式証券の利益がEPSを6.26ドル押し上げたと開示しています(*5)。
本業の実力は30%増
では、この押し上げ分を単純に除くとどうでしょうか。
1株利益は2.85ドルとなり、市場予想の2.89ドルをむしろわずかに下回ります(*6)。
ただしAlphabet自身は、市場予想と比べられる「調整後EPS」を正式には開示していません(*8)。
それでも、294%という派手な見出しと本業の実力とでは、受ける印象がだいぶ変わります。
決算の実力を測るなら、含み益で膨らんだ純利益より、増益率30%の営業利益で見ておきたいところです(*5)。
それでも株価が売られた理由
好調な決算にもかかわらず、発表後の時間外取引で株価は下落しました。
Reutersは、その背景に設備投資の増額だけでなく、Geminiの主力モデルの遅れやコーディング分野での競争激化への懸念もあったと伝えています(*2)。
引き上げられた設備投資計画
AIの計算基盤を広げるため、設備投資が急拡大しています。
この四半期の設備投資は449億ドルと、前年同期の224億ドルからほぼ倍増しました(*5)。
さらに会社は、通期の設備投資計画を従来の1,800億〜1,900億ドルから1,950億〜2,050億ドルへ引き上げました。
市場が見込んでいた約1,880億ドルを上回る規模です(*6)。
本業で生んだ営業キャッシュフローは約390億ドル。これを449億ドルの設備投資が上回り、四半期のフリーキャッシュフロー(自由に使える現金)は約59億ドルの赤字に転落しました(*5)。
稼いだ現金以上に投資へ振り向ける局面に入ったことが、投資家の警戒を招きました(*2)。
Q2は自社株買いゼロ、外部から約700億ドルを調達
前年同期に132億ドルあった自社株買いを、この四半期は実施していません。
その一方で、6月には株式と強制転換優先株の発行で約496億ドル、社債で約203億ドルを調達しています。これとは別に、最大400億ドルの株式発行枠も設定しましたが、6月30日時点でこの枠を使った発行はまだありません。
手元の現金と有価証券は2,424億ドルと潤沢で、資金繰りそのものに不安があるわけではありません(*5)。
それでも少なくともQ2の資金フローでは、自社株買いよりも外部資金調達が目立つ形となり、AI投資規模の大きさを映しています。
これから見ておきたいこと
今回の決算は、本業の強さと投資負担の重さが同居した内容でした。
最後に、次の四半期以降のウォッチ項目を整理しておきます。
クラウドの伸びが設備投資に見合うか:82%成長と積み上がる契約残高が続くかどうか
含み益の反動:株式相場が崩れたとき、純利益がどれだけ揺れるか
AI開発競争:主力モデルやコーディング分野で、競合にどこまで対抗できるか
本業の売上と営業利益は、文句なしの成績でした。一方で、AIへの巨額投資が実を結ぶかは、まだ数字では答えが出ていません。
それでも筆者は、この下落を悲観一色で見る必要はないと考えます。
5,140億ドルまで積み上がったCloud契約残高と、需要が供給能力を上回っているという会社側の説明を踏まえれば、設備投資の少なくとも一部は、すでに顕在化している需要に対応する先行投資と見ることができるからです。
ただし、契約残高がそのまま利益や投資回収を保証するわけではありません。需要が実際の売上と高い設備稼働率に結びつくかを見ていく必要があります。
むしろ気がかりなのは、FCFの赤字そのものよりも主力モデルの遅れです。
需要が続けば現金を回収できる可能性がありますが、モデル開発で後れを取れば、Gemini関連サービスへの需要そのものが細りかねません。
次の決算では、投資と回収のバランスに加え、Geminiの競争力も確かめておきたいところです。
参考文献
(*1)The Wall Street Journal “Alphabet Stock Slides as AI Spending Keeps Up”(時間外で一時4.7%安)2026年7月22日
https://www.wsj.com/livecoverage/stock-market-today-dow-sp-500-nasdaq-07-22-2026
(*2)Reuters “Google increases capex forecast again after cloud-driven quarterly beat”(時間外の株価下落・AI開発競争への懸念)2026年7月22日
https://www.reuters.com/business/google-quarterly-cloud-revenue-growth-beats-expectations-2026-07-22/
(*3)Woodstock 米国株投資アプリ「Alphabet Class A(GOOGL)」株価画面、2026年7月
(*4)App Economy Insights(@EconomyApp)“Alphabet Q2 FY26” 損益フロー図、2026年7月
(*5)Alphabet Inc. “Alphabet Announces Second Quarter 2026 Results”(Form 8-K Exhibit 99.1、2026年第2四半期決算リリース)2026年7月22日
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1652044/000165204426000066/googexhibit991q22026.htm
(*6)CNBC “Alphabet earnings takeaways: Q2 revenue beats, GOOGL stock sinks on 2026 capex hike” 2026年7月22日
https://www.cnbc.com/2026/07/22/google-earnings-q2-goog-live-updates.html
(*7)Google “Q2 2026 earnings call: Remarks from our CEO”(Google Cloud契約残高5,140億ドル)2026年7月22日
https://blog.google/company-news/inside-google/message-ceo/alphabet-earnings-q2-2026/
(*8)AP News “Alphabet earnings”(会社が市場予想と比較可能な調整後利益を開示していない旨)2026年7月22日
https://apnews.com/article/f914606d842d4c6848019083d667fc3a
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